はじめに、人間関係の原則=境界線を形成しないで大人になってしまった人の特徴を見ます。自分自身や周りの人を思い浮かべながら確認してみてください。
境界線がない人の特徴
迎合する
「争いたくない」、「嫌われたくない」、「批判されたくない」という恐れから、他者の意見や考えに納得や賛成をしていないのに合わせてしまう。心と言動が不一致の人のことです。
これでは心がどんどん苦しくなるだけです。
迎合すれば相手に嫌われることはありませんが、心から打ち解けているわけではないので、親密になることもありません。
この生き方は結局、あなたにとって善いものは何も生み出さないのです。
自分にとって善いものも受け取らない
愛される、親切にされるといった自分の必要に関する援助を断る。
こういう人は「自分の境界線内のものに責任を持つ」ということを知らないのです。
「自己を養い管理する責任がある」ということを知らなければ、自分の必要を満たすことに罪悪感を感じてしまうのです。
支配的になる
他人の境界線を尊重しない。他者の「ノー」を受け入れずに大人になってしまった人です。こうした支配的な人には主に2つのタイプがあります。
① 強引な支配者
他者のことなど考えず自分のことしか考えない人。
【対処法】 逃げる。関わらないようにする。
相手との関係性が対等以上でない場合、このタイプの人に面と向かって不誠実を指摘しても改善は難しいことが多いです。状況が良くなるどころかむしろ攻撃的な言動に遭い、あなたに何
らかの害がもたらされるかもしれません。
※家族や関わりを避けられない人の場合は、後の学びで対応することができるようになります。
② 操作的な支配者(隠れ支配者)
本人は自分が支配的な人間であるとは思っていない場合が多い。
例)こちらの善意や愛、道徳観や価値観などに訴えかけて、自分の思い通りに人を動かそうとする人
【対処法】 不誠実さを面と向かって指摘する。それによって反省し、他者の境界線を尊重するようになる。
他者の必要に無関心になる
こういう人は、神がその人の人生に送られた隣人(家族や友人、関わる人々)を助ける責任を放棄している。
【聖書】ローマの信徒への手紙 12章18節
「できれば、せめてあなたがたは、すべての人と平和に過ごしなさい。」
「できれば」とあるように一定の限度内で他者に対する責任を果たすように言われている。
境界線の形成段階
境界線の土台は絆作り
何にもまして他者との間に絆作りを優先することが大切です。
人は「何があっても自分のことを愛してくれる人」との絆があってはじめて、自己を確立することができるからです。
自分にとって絶対的な味方ができなければ、他者に「ノー」と言うことはできません。周りの人がみんな境界線のない人であれば孤立してしまうからです。
まずは、神や人との支援関係を持つことが重要です。
境界線の形成期
生後5ヶ月くらいまでは、赤ちゃんはお母さんと自分とは一心同体だと思っています。この期間を過ごすことによって赤ちゃんは絶対的な味方としての母親と絆を結ぶのです。絆の土台ができて初めて、自己を確立して行くことができるようになります。
それでは、人の中に境界線がどのように形作られて行くのか、段階を追って見て行きます。
1.分化期 「僕とママは同一じゃない」
時期 生後5~10ヶ月
これまでべったりだった母親を離れ、色々なものに興味や関心を持つようになる
2.練習期 「僕は何でもできる」
時期 生後10~18ヶ月
母親を置き去りにして遊ぶようになる。
3.最接近期 「僕にはできないこともある」
時期 生後18~36ヶ月
この時期の特徴(境界線が形成される時期)
1)怒りをあらわす
怒りは直面している問題に対処するためのパワーになる必要な感情です。子どもの怒りを受け止めてあげる必要がある。
2)所有権を主張する
「僕のもの」「僕の」と言うようになる。所有権を持とうとすることは、自分に関することを管理しようとする責任を養う行為です。
人間は神によって、自分という賜物を所有し、管理する責任が与えられている(自分の人生を生きるように)。
自分の人生に責任を持ち、しっかりと管理するようになるためには、所有権を育むことが不可欠なのです。
3)「いや」「だめ」と言う
自分の境界線を守る訓練。自分の好きなものと嫌いなものを明確にし他者に伝える練習をしている。自己決定力、自己効力が養われ、主体性が育まれる。
親の接し方
①「いや」を受けとめる
子どもが「いや」と言っても大丈夫だと感じさせてあげる。ただし何でもありなわけではない。
② 他者の境界線を尊重することを学ばせる
他者の「いや」を受け入れるように助けてあげる
境界線をもたない人の特徴と境界線の形成時期をご覧になってどうでしたか?
「自分には遅すぎるのでは」と心配になった方もいるかもしれません。
でも大丈夫です。
3歳まで境界線を身につけるのは理想的なモデルです。
私たちが暮らす日本では特に、自分を表現することに対してネガティブな文化が根付いています。
そのため、大人になった今でも、他者との間に境界線を引くことができずに苦しんでいる人が多くいます。
かつての私もそうでした。
境界線は大人になった今からでも身につけることができます。幼少期のときよりも大変になるかもしれませんが、十分習得可能なのです。
人生を改善させるのに「遅すぎる」ということはありません。
私も40歳近くになって境界線を学び実践するようになりました。
おかげで今では、大切な人たちと互いに助け合い、互いに支え合う素晴らしい関係を築くことができています。
人生を変えるのに遅すぎることはないのです。
今日から始めることが、あなたにとって最善のときなのです。
まとめ
境界線を形成し自分と他者を明確に区別できるようになるためには、まずはじめに「愛の絆を築くこと」が重要です。
自分の存在を無条件に受け入れてくれる存在があるからこそ、子どもは恐れず自分を表現することができるようになります。
また、自分が受け入れられた経験を持っているからこそ、同じように、自分と違う他者を尊重することができるようになるのです。
それは大人であっても同じです。ですから、
何よりもまず、他者との絆を育むことを優先しましょう。
あなたが普段接している人に、いきなりピシャリと境界線を引いてしまったら、あなたの周りからは人が誰もいなくなるかもしれません。
あなたに精神的、肉体的に虐待してくる人なら関わりを断ったり、距離を置くことは大切です。
けれども、相手と健全な関係を持ちたいと願うなら、あなたが相手を大切に思っていることが分かるような態度で接しましょう。
たいていの場合、あなたが相手のことを大切に思えば、その気持ちは伝わります。
境界線の学びを深めて、あなたの人間関係を健全に、そして豊かにしていきましょう。