実績ある成功の方法論
「エフェクチュエーション」は、起業する人やビジネスマンだけでなく、新しいことに挑戦するすべての人に成果をもたらす方法論です。
エフェクチュエーションは、実際に成果を出した27人の熟達した起業家たちが、共通して持っていた思考様式から見出されました。
これまでは、新規事業などが成功するのは、起業家の特性や資質によるものだと考えられていました。
ところが、成功者たちを分析したことによって、成功をもたらす法則があることが分かったのです。
それがエフェクチュエーションの5つの原則です。
エフェクチュエーションの効果が期待できる人
- 起業しようとしている人
- すでに起業したけど成果が出てない人
- 会社で新しいプロジェクトを立ち上げる人
- プライベートで新しいことに取り組んでいる人など
新しいことにチャレンジするすべての人に、エフェクチュエーションは力を与えてくれます。
それではさっそく、エフェクチュエーションについて説明していきます。
エフェクチュエーションとは何か?
「エフェクチュエーション」(effectuation)は、結果を予測できない新しい商品、新しい事業、新しい市場などで効果の出る取り組み方法のことです。
効果(effect)を重視する理論なので、「エフェクチュエーション」(実効理論)と名付けられました。
エフェクチュエーションが誕生したわけ
サラス・サラスバシーという経営学者が、成功した27名の起業家を研究することによって、予測ができない不確実性の中で成果を上げた5つの思考様式が見出されたのです。
サラス・サラスバシー教授について
経営学者
ヴァージニア大学 ダンデンスクール アントレプレナーシップの教授
研究対象者
アメリカで成功した起業家リストに載っている27名の起業家
対象者の選考基準
- 1社以上を、チームor個人で起業した人(27名は最低3社以上起業していた)
- 創業者として10年以上フルタイムで働いた人
- 1社以上を株式公開させた人
この基準を満たした、いわゆる成功した起業家が27名、研究対象として選ばれた
研究実験の内容
熟達した27名の起業家に、
- 仮想の新商品を扱う会社の運営をするという設定
- 起業家が直面する、典型的な10の問題への意思決定を調査
熟達した27名の起業家に、上記の設定で話を聞く。
彼らの頭に浮かんできたことを継続的に話してもらい、録音した会話を書き起こし分析した。
そこから、皆に共通する5つの原則が見出された。
エフェクチュエーションの5つの原則
1.「手中の鳥」の原則
「手中の鳥」の原則とは、すでにある自分の「手持ちの手段(資源)」の中で、新しい取り組みに対して、効果が出そうな「自分にできること」を考え、そのアイデアを実行することです。
新しい商品、新しい事業、新しい市場の可能性は予測が不可能です。まだ世の中にない商品やサービスであるため、顧客や市場を予測することができないからです。
そうした不確実性の高い取り組みには、「自分のできること」で効果が出そうなことから実行していく。それが「手中の鳥」の原則です。
ちなみに、手中の鳥とは、森の中にいる鳥を追うのではなく、すでに自分の手の中にいる鳥を大切にするということわざです。手に入るかどうかも分からない森の鳥を捕まえようとして、手中の鳥を手放すのは愚かな行為という意味です。
結果が予測できない新しい商品、サービスなどは市場調査をしても、潜在顧客や市場を見出すことはできません。
ですから、自分の「手持ちの手段」で効果が出そうなことからはじめる方が、結果として上手くいくので、そう名付けられたようです。
例
自作のハンドクリームを売りたい女性
手持ちの手段:ハンドクリーム、自分の時間
無いもの:実店舗、資金(広告費や市場調査費)
「自分のできること」のアイデア:知り合いの美容院で、客に無料でハンドクリームを塗ってスベスベ体験をしてもらう。
これなら、自分のできることで新商品、新事業の成功の可能性が出てくる。
「自分のできること」を実行した結果、マダムの間でハンドクリームの口コミが広がり、商機が出てきた。しかも、客が喜んだので美容院にも恩恵があった。
2.「許容可能な損失」の原則
効果が出そうな「自分のできること」を決める時、どこまでの損失なら許容できるかという基準で選択すること。
例
自作のハンドクリームを売りたい女性
許容できない損失:生活費を削って資金を捻出、借金をする
許容できる損失:ハンドクリーム、自分の時間
この基準で、知り合いの美容院で客にハンドクリームを無料で試供するという「自分のできる」取り組みにした。
もし上手く行かなくても、損失はハンドクリーム代と自分の時間だけ。大きな痛手にはならない。
こうして、許容可能な損失の範囲内で、「自分のできること」をやって、効果を出そうと試みたのです。
3.「クレイジーキルト」の原則
効果を出そうとする取り組みの中で、自分の活動にコミットしてくれる人を探す。
コミットしてくれる人が新しい「手持ちの手段」を提供してくれ、チームとして拡大した「新しい手持ちの手段」を展開できるようになる。
要は、お互いのためになる協力者を見つけるということ。
例
ハンドクリームを売りたい女性
彼女は、実店舗もなく広告費もないのでネット販売もできない。
そのとき、ハンドクリームと自分の時間を活かすため、美容院の客にハンドクリームを塗ってスベスベ体験をしてもらうアイデアを思いつく。
そして協力してくれる美容院を探し、アイデアを実行することに。
客も喜び美容院にもメリットが出て、Win‐Winの関係を構築することができた。
新たな協力者を得ることで、「手持ちの手段」が拡大していく。
4.「レモネード」の原則
偶然をテコとして活用すること。
予期せず協力者からもたらされた手段や目的を活用すること。
また、失敗や思った通りにいかない現実を学習の機会として活用すること。
例
アイスホテル(スウェーデン)
客室、ベッドがすべて氷でできているホテルの事例
創業者は当初、札幌の雪まつりのようなアートギャラリーを開催しようとした。
国内外のアーティストによって、氷でできた作品が多く展示されることに。
ところが開催当日、めったにない気温上昇と雨によって、アート作品が溶けてしまう。
そこで急きょ、残った氷でアート作品を作るワークショップを行った。
そのとき、参加者が切り出した氷で「かまくら」を創作した。しかも、そこに泊まりたいと言う。
この偶然の出来事から発案されたのが、アイスホテルなのです。
このように、失敗や偶発的に起こったことをそのままにするのではなく、新しい「手持ちの手段」として活用するのが、レモネードの法則です。
5.「飛行機のパイロット」の原則
「飛行機のパイロット」の原則は、結果が予測できない不確実性の中でも、自分がコントロール可能な活動だけに集中し、エフェクチュエーションのプロセスを回し続けることです。
それによって、最初には思ってもいなかったような新しい商品・事業・市場の可能性が開かれるのです。
まとめ
エフェクチュエーションは、効果を出すことを重視している方法論です。
たんに学者が考えた理論ではなく、事業を成功させた起業家たちに共通する「実践的なコツ」なのです。
ですから、エフェクチュエーションを学び実践していけば、あなたも成功者の仲間入りをすることができるのです。
チャンスは待つものではなく、行動を通じて創出されるものなのです。
エフェクチュエーションは、そのよい実例です。
次回は、エフェクチュエーションの5つの原則を1つずつ、詳しく見ていきます。